『恋人までの距離』 そして アカデミー賞脚色賞ノミネート『ビフォア・サンセット』から3年(アカデミー賞R 脚本賞ノミネート)NYとパリ 二人のあらたな物語がはじまる
めめ
はまゆう
当時役者を志していた私は、9月公演の舞台に向けて日々稽古に勤しんでいました。
8月も半分を過ぎた頃、10代で負った心の傷を埋めてくれた彼に出会い、付き合いだしました。
今にして思えば、私は相手に感化されやすいのでしょう。
夜稽古へ出かける私に彼が
「今夜は行かないで」
と言えば、劇団員に病気と偽って傍にいました。
そんなことの繰り返しで、舞台は納得のいくものではなく。
自分のふがいなさに、芝居への熱情も冷えていくのを止められませんでした。
でも、彼さえ傍にいてくれたら、それで十分。
…私はそう思っていました。
役者を続けることで勘当同然だった私には、彼は家族そのものだったのです。
彼も、私とのことを真剣に考えてくれているようでした。
ヘビースモーカーだったのも、禁煙に成功しました。
もちろん、私のことだけでなく、翌年に控えた海外留学を見越してです。
私は喉が強い方ではないため、彼の体のことと、自分の為にも禁煙を二人の重大な約束事にしました。
彼の誕生日だったクリスマスの料理を作りに、彼に内緒で部屋へ行った日、
私は台所の片隅に仕舞われた灰皿を見つけました。
まだ新しい吸殻が、山の様にあったのです。
目の前が真っ白になって、私はそのまま歩いて帰りました。
何時間もかけて歩いていると、頭が整理されていくのが分かります。
彼は、私を裏切ったのです。
彼と過ごした1年が、色あせていく気がしました。
些細なことです。
禁煙に失敗しただけのこと。
でも。
彼は重病も抱えていました。
体に負荷のかかることは、絶対にして欲しくなかった。
一緒に未来を歩いていきたかったから、そう言って約束したのに・・・。
泣きながら謝る彼と、冷却期間を半年設けましたが二度と信頼する気持ちにはなれず。
結局私が実家に引き戻る形で幕を引きました。
たまに思い出すのは、
彼ほど私を愛してくれた人はいなかった ということです。
でも、私には彼を許せなかった。
本当の意味で、彼を受け入れていなかったのだと思います。
それ以来、誰のことも深く好きにはなっていません。
フラッシュバックして、好きだという感情が生まれた次の瞬間には
心が閉ざされてしまうんです。
幸せだった記憶と、残酷な気持ちとが、今も私に残っています。
サム
好きだけど別れるなんて意味がわからないと思ってたけど、意地っ張りで別れてしまった。
素直になって会いに行こうと最終の新幹線に乗ったら出張で彼は居なくて、泣きながら深夜バスで帰った。私たちって縁がないんだなって。
確認しなかった私も馬鹿だけど、好きならきっと迎えに着てくれると思い込んでたんだ。なんで先に連絡しなかったの?ってメールで怒られたけど、掛けてたんだ。これで会えなかったら、もう終わりにしようって。
映画みたいに彼は走って迎えに来てくれなかったけど、もし偶然再会できたらどんなに素敵だろう。
それは私の17歳、高校二年生の時のことでした
私は男子と話すのがとても苦手でした。だから誰とも付き合ったことがなく気付けば高校二年生でした。
彼との出会いは学校の寮。私の学校には学生寮がいくつかあって、私の住んでいた寮は5人と少なかったのですが、彼も同じ寮だったのです。
でも私と彼は全く話すことなく寮で過ごしていました。
そして事件は起きました…寮の5人のうち、私と彼は同じ学年で二年、他の3人は三年生で卒業だったんです。つまり寮には私と彼の2人だけになる…ということにその時初めて気付いて…。先生達も忙しい卒業シーズンにバタバタしていて全くそのことに気付いていなくて、それでその時初めて彼が「俺ら2人じゃね?」と話しかけてきて…最初は嫌々話していたのですが、彼と話すのはとても楽しくて、その日は初めて話したのに気付けば夜中までずっと喋っていました。男子と話すのが初めて楽しいと思えた時でした。
寮で2人きりの状態が続いたのですが、私も彼もどちらもそのことを先生に話したりはしませんでした。周りのみんなも案外気付いていなくて、なんだか2人だけの秘密みたいでドキドキしていました。
学校では全く話さないのに寮に帰ってきたらずーっと彼と話す…そんな毎日が春休みまで続いていました。暫くして先生はようやく私たちのこの状況に気付き、すごく謝られましたが、私と彼は全く怒りませんでした。だって彼と仲良くなれのはこの事件のお陰だから。勿論のこと親にもそんなこと話しませんでした
そして新学期が始まり、寮にはまた新しい生徒が何人か入ってきて…私はなんだか彼との居場所を壊された気分でした。でも仕方ないことだと言い聞かせていました。でも彼とはまた話さなくなりました…。2人で毎日夜遅くまで話していたリビングも、新しい生徒が座っていて、話す場所がありませんでした。
私には彼と2人きりで過ごした日々が本当に夢みたいでした……
結局、私はそのまま卒業…お互い違う大学へ進学しました。
今はもう働いているのですが、今でも思い出しては本当に夢みたいな日々で、彼の笑顔をはっきり覚えています。
あの時私がもう少し大人で、ちゃんと自分の気持ちを伝えていれば…何か変わっていたかもしれない。私の運命のような淡い思い出でした。